安くて使えるやつ・・・ホンビノス
2016/08/31
ホンビノス、という貝を知ってますか? ハマグリとあさりの中間くらいの大きさで、生息地によって白っぽかったり黒っぽかったりする貝です。ここ数年でマーケットに出回るようになったのですが、10個で500円くらいで十分立派なものが買えますから、ハマグリに比べるとかなりお得感があります。まだ一般的に馴染みが薄いのでしょう、いつも行っている鮮魚売り場でも夕方でも残っていることのほうが多いので、よろこんで買い込んでしまいます。
もともとは、北米産のものですが、船のバラスト水(船底に重しのために入れておく海水)の中に紛れ込んだものが、日本(東京湾や伊勢湾、大阪湾など)で放出されて繁殖したものだと考えられています。船のことは詳しくないのですが、北米から空船(ないし荷でいっぱいではない状態で)日本にやってきた船が、日本で荷をいっぱいにするためにバラスト水を捨ててたのかな、と想像すると、日米の貿易での日本の輸出超過を表しているのかな、などとも思えますね。もっとも、バラスト水は必ず入れ替えるものならば、こんな想像は当てはまりませんが(笑)
日本に入ってくる外来種といえば、生態系を破壊する悪者、というイメージが強いのですが、ホンビノスはまだ「悪さ」をしていないようです。長いスパンで見ればわかりませんが、今のところ、被害はでていません。
さて、肝心の食べ方です。
北米では、クラムチャウダーとして食べるのが一般的です。アサリやハマグリより鉄分をやや強く感じる貝なので、お吸い物よりもクラムチャウダーの方が合うことははっきりしています。貝の使い方は一通り試してみました。合う/合わないを一覧表にするとこんな感じ。対戦相手は、あさり、ハマグリの在来種。ただし、ハマグリは、東京で主に流通している外洋性のチョウセンハマグリで、ある程度の大きさのものだと思ってください。また、アサリは産地によって食感も味(だしの味)も全く違うので、ややアバウトです。(アサリについては、そのうちまとめますが、何といっても美味しいのは伊勢湾ですね)
ホンビノス あさり はまぐり
お吸い物 ☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
酒蒸し ☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
味噌汁 ☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆(小さいもの)
天ぷら ☆☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
焼き貝 ☆☆☆☆☆ 体験なし ☆☆☆☆☆
クラムチャウダー ☆☆☆☆☆ ☆☆☆ 体験なし
ボンゴレ・ビアンカ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 体験なし
ボンゴレ・ロッソ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆ 体験なし
炊き込みご飯 ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆(小さめのもの)
和風だし(注)☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆(小さめのもの)
(注)和風だしは、鰹節と昆布でとるところに貝を加えたもの
例えてみれば、ホンビノスはガタイのよい白人、あさりは細身の日本人(三重のものは別)、ハマグリは筋肉質の日本人、という感じかな。食べてみても、料理をしてみてもわかります。ホンビノスはとにかく「強い」! 火にかけてから貝が「ぱかっ」と開くまでの時間が全く違います。アサリはすぐにギブアップしますが、ハマグリは少し根性がある。これに比べて、ホンビノスを降参させるのにはかなり時間がかかります。「あれ、死んでるのかな」と思うくらい時間がかかることがある。やっぱし、外人さん強い! あれこれと情報を見ていると、富栄養の海でも生き残れる貝らしい。やっぱり、ガタイのよい白人さんです。
食感は、外洋性のハマグリに近く、歯ごたえがあります。そのくせ、出てくるスープはハマグリとは全く違う。繊細さはなく、強いのです。これは、鉄分を多く感じるからかもしれません。ですから、お吸い物はイマイチ。アサリ(江戸前か伊勢湾)のような美味しいスープではありませんが、それなりに濃厚。天ぷらや焼き貝は、食感が良くなるので美味しい。ボンゴレは、ビアンカはアサリの勝ちですが、ロッソはホンビノスに軍配があがりました。しかし・・・何と言ってもクラムチャウダーが抜群。これはアサリとは比べ物になりません。何種類か作ってみたのですが、一番のお気に入りの作り方をご紹介します。
ホンビノスのクラムチャウダー
材料(2〜4人分)
- ホンビノス(4〜5個)
- 玉ねぎ(あまり大きくないもの1。大きかったら半分)
- セロリ(葉っぱはいらない。小さめのもの1本で十分)
- バター、小麦粉、牛乳、白ワイン、塩、胡椒
ホンビノスは砂を吐かせよく洗ってワイン蒸しに
(ワインで蓋をして貝が開くまで煮ればOK)
貝を外して細かく切る。煮汁はもちろん取っておきます
タップリめのバターで細かく刻んだ玉ねぎとセロリを中火で炒める
炒めながら少しずつ煮汁を加えていく
十分に火が通ったら小麦粉を入れて弱火でよく炒める
牛乳を加えて滑らかになるまで撹拌し、十分に混ざったら塩、胡椒で味を整える
クラムチャウダーは、ジャガイモやニンジンを入れたり、ベーコンを入れたりするレシピもありますが、
貝の本来の味を楽しむのであれば、できるだけシンプルな方が美味しい。
ベーコンを入れたら全くの別物、ジャガイモやニンジンも甘みが過剰だと思います。
もちろん、最後にパセリを散らしたりクルトンを浮かせるのはお好みで。
上記の量で、二人だとかなり「たくさんある」という感じですね。
ホンビノスのボンゴレ・ロッソ
材料(2〜3人分)
- ホンビノス(6〜8個)
- にんにく(1個以上)
- トマトソース(別に作っておく/注1)
- パスタ(人数分)
- 塩、胡椒、ワイン(ワイン蒸しにする場合)
最初に、ホンビノスに火を通して身を外します。
火を通すのは、ワイン蒸しでもいいですし、ガーリックオイル(注2)で蒸し焼きにしてもで
きますが、味わいははっきり変わります。はっきりした貝の味を楽しみたければガーリックオイルで、少し複雑な味わいにしたければ白ワインで、という感じです。
ホンビノスが口を開けたら、貝の身をはずして小さめに切ります。ホンビノスはハマグリの小さめのものくらいの大きさですから、そのままだとパスタには合いません。ワイン蒸しにしてもガーリックオイルで蒸し焼きにしても、出たスープはそのまま鍋に残しておきます。
鍋を再び火にかけ、ホンビノスを投入。さらにトマトソースを加え、塩、胡椒で味を調えます。そこに茹で上がったパスタを加えて出来上がり。
パスタは好みで良いと思いますが、私はかなり変遷しました。最初は「ボンゴレは細いもの」と思い込んでいて、少し細めのものを使っていましたが、ある店で太いものを食べてから、その方が好みになりました。ちなみに、イタリアで食べたボンゴレ・ロッソは、どこも普通に太い麺を使っていましたね。
(注1)トマトソースの作り方はいろいろありますが、トマトの味だけでなく素材の味を楽しむ料理には、ガーリックオイルでトマトを煮込んだだけのシンプルなものが良いと思います。簡単に作るのであれば、ガーリックオイルでトマトの水煮を炒め、それにトマトジュースを加えて煮込めばできます。私は、トマトの味が少しシャープな方が好きなので、できるだけ生のトマト
を使うようにしています。普段買い物をしている有機食材を置いているお店で、完熟を通り越して見切り品になっているトマトを安く売っていれば、買い込んでしまってトマトソースを作っています。イタリア産のトマトにこだわる方もいるでしょうが、味がしっかりしたものであれば、国産のものでも十分に美味しくできます。
(注2)ガーリックオイルは、オリーブオイルににんにくを入れてゆっくり煮て作ります。にんにくを潰して使うのであれば、15分から20分くらいかけて弱火で煮るのが秘訣です。