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レシピ 魚貝類

あわびのこと、あわびの煮貝(レシピ付き)

2016/08/30

この日、行きつけのお魚屋さんで蝦夷鮑をとっても安く売っていました。「いつもの半額?」とも思ったのですが、さらに少しおまけしてくれたので、大喜びで購入。数はあるし、何をしようかな・・・と考えて、煮貝と鮑ご飯にすることにしました。

蝦夷鮑は、「クロ」と呼ばれる「クロアワビ」の仲間です。北方に生息するものが蝦夷鮑と呼ばれるのですが、一般的に「クロ」よりも小さめですね。アワビには、その他にも「マダカアワビ」(アオ)「メガイアワビ」などがあります。一般的に食べられているのは、「クロ」と「メガイ」「エゾ」ですが、「アオ」はとても大きくて美味しいアワビです。漁獲量もとても少なくなったようで、もう何年も食べていません。いずれにせよ、高級食材であることには変わりありませんので、頻繁に食べられるものではありません。アワビの仲間には、もうひとつ「トコブシ」もあります。煮て食べることが多いのですが、ご飯を炊くと美味しいので、作った時にもう一度書いてみようかと思います。

アワビの代表的な食べ方は、水貝(おさしみ)や蒸しアワビ(お寿司屋さんで食べますね)ですが、天ぷらにしても煮貝にしてもとても美味しい。あとは、肝でソースを作ったソテーもほっぺたが落ちる美味しさです。もちろん、肝は肝だけで食べても美味しい。「美味しんぼ」にも「儒教精神で目上を敬う韓国人でも、アワビの肝だけは譲らない」と紹介されていましたね。

アワビの煮貝は、甲州の名産物です。海のない県なのに、初めて知った時(30年以上前です)には「なんで?」と驚きました。山梨県で中央高速から国道20号線に降りたら「名物/煮貝」の看板をたくさん見たのです。まさか「貝」がアワビとはおもわず、「なんだろう」と車を止めてお店で確かめてびっくりしました。煮汁に浸されたアワビはとても美味しそうですが、高くて手が出なかったことを覚えています。

日本は海に囲まれているので海産物が豊富ですが、煮貝のように時々「あれ?」と思うことがあります。例えば、九州北部や山口、はたまた京都で食べられる「干し鱈」の煮物。タラはご存知のように北の魚ですが、何故か干し鱈は関西以西でよく食べられます。小さな頃、お正月に供される干し鱈を炊いた煮物が大好きでしたが、祖母も母も下関ですので、あちらの料理だったようです。他に魚が捕れない地方ならともかく、四季の魚が豊富な下関で干し鱈が珍重されていたのは、ちょっと不思議な感じがします。もっとも、干し鱈はとても美味しいので、欧州でも(特に南、イタリアやスペイン)でもよく食べられます(バカラオ、という食材です)。イタリアで現物を見ましたが(もちろん、今なら日本でも簡単に手に入ります)、日本の干し鱈とほとんど同じ物でした。

アワビを煮るのは難しくありませんが、時間がかかります。中途半端な時間では、冷めた時に硬くなってしまうのです。そのまま食べる時には冷たい方が美味しいので、頑張って時間をかけましょう。普通は、2、3時間煮る(蒸す)必要があります。

私の作り方は、20年以上前に和食の板前さんから習った方法です。これが一般的なのかどうかはわかりませんが、外すことなく美味しく出来るので、満足しています。

アワビの煮貝

アワビはよく掃除をしておきます。
広めの鍋でお湯を沸かし、沸騰した状態で殻を下にしてアワビを「殺し」ます。お湯はたっぷりでなく、殻が浸る程度にします。およそ30秒ほどで、アワビを取り出します。
取り出したアワビは、ナイフで簡単に身を外すことができます。外したら、肝と貝柱に分け、「口」と呼ばれる硬い部分を取ってしまいます
たっぷりの日本酒を煮きります(今回は4合使いました)。2合ほど水を加えて、沸騰したら蓋をして弱火で貝柱を煮ます。約2時間。
肝は別に煮ました。あとでご飯を炊くつもりだったので、日本酒と少量のみりんを煮切って、醤油を少量入れて煮ました。これは冷まして、煮汁とともにとっておきました。
その間に、鰹だしを取ります。今回の分量であれば、出来上がり2合くらいで十分です。出汁には、塩と醤油(少し)、みりん(ほんの少し、コクを出すくらい)で味をつけておきます。味は、もちろん好みや用途に合わせて工夫してください。
2時間ほど貝柱を煮たら、出汁を加え、さらに小一時間煮ます。冷めたら、冷蔵庫に入れます。
冷蔵庫に入れた煮貝は、煮汁が完全にゼラチン状になります。他の貝をこんなに長い時間煮ることはないのでわかりませんが、貝の煮汁がゼラチン状になるのはびっくりですね。あとは、薄く切って食べるだけ!

アワビの肝ごはん

肝はどうやって食べても美味しいのですが、今回は思い切って全部つかってご飯を炊きました。

お米を研いで、お釜に水と煮汁(貝柱の煮汁と肝の煮汁)、肝を加え、昆布を敷いて15分ほど置きます。
あとは、炊くだけ。びっくりするくらい味が出た、アワビの「肝ご飯」の完成です。

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